Google+

高次脳機能障害

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害は、脳に関する後遺障害です。脳には、①呼吸や運動など、ヒトが生物として活動するために必要な部分と②他人と意思疎通し、問題を解決し、作業に対して持続力をもち、社会行動を営むなど、ヒトがヒトらしく高度な活動をするうえで必要な部分があります。このうち②は、ヒトらしい高度な脳の働きという意味合いで、高次な脳の機能、すなわち高次脳機能といい、②に障害を残したものを高次脳機能障害といいます

高次脳機能障害になると、記憶力がなくなったり、注意力が散漫になったり、判断能力がなくなったり、言語能力が低下したり、突然激怒したり、人格や性格が変化したりするなど、様々な異変が生じます。

高次脳機能障害は、平成13年になってようやく自賠責の認定基準が作られ、その後も基準の改正が繰り返されるなど、まだまだ新しい類型の後遺障害です。

高次脳機能障害が新しい類型の傷病であるため、病院での診断が遅れた、もしくは、病院で高次脳機能障害が見落とされた事案も多く報告されています。

現に、当事務所が担当した事件で、主治医による高次脳機能障害の発見が遅れ、不審に思った患者さんのご家族がセカンドオピニオンに連れて行き、そこでようやく高次脳機能障害が発見された事案がありました。その事件では、相手方の保険会社が高次脳機能障害の発見が遅れた点を問題視し、「交通事故から何ヶ月も遅れて高次脳機能障害が生じたのはおかしい。交通事故とは無関係だ!」と主張し、裁判で激しく対立が生じました。また、高次脳機能障害の影響で被害者の方が事故当時の記憶を喪失してしまい、被害者の記憶喪失につけこんだ相手方加害者が、事故状況に嘘をついて、当方の過失を峻烈に主張しました。がんばった甲斐あって、幸いなことに勝訴判決を得ることができましたが、高次脳機能障害の難しさをあらためて思い知った事件でした。

高次脳機能障害は、世の中にたくさんある後遺障害の中でも、とりわけやっかいで、とくに難易度が高い案件といえるのです。

高次脳機能障害で適切な等級を獲得するポイント

まず高次脳機能障害が生じていることを立証する必要があります。

複数の主治医が口をそろえて「高次脳機能障害である」と診断していたとしても、所定の基準を満たしていなければ、高次脳機能障害として後遺障害認定を受けることができません。

そのために必要な要件は、①外傷性くも膜下出血、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷、急性硬膜下(外)血腫などの傷病名が付いていること、②レントゲン、MRI、CT画像で画像所見があること(とくにMRIとCT画像の所見が重要)、③頭部外傷後の意識障害、もしくは、健忘あるいは軽度意識障害が生じたこと、です。

次に、高次脳機能障害が生じているとして、どの程度の重篤さであるか、等級のふりわけの問題があります。実務では、脳機能がどの程度低下しているか、社会生活にどの程度影響があるかをみて等級認定がなされます。

気をつけなければならないのは、患者さんの自己申告だけでは適切な等級を獲得できない点です。適切な等級を獲得するためには、症状を裏付ける客観的な検査所見が必要不可欠です。各種の検査は、医療機関で実施してもらい、適切な所見を残しておく必要があります。

医師によっては、被害者の方が黙っていると、わざわざ検査を実施しない事案も多く見受けられます。なぜ検査をしない医師がいるのか?医師が悪いわけではありません。「治すために必要な検査」と「立証するために必要な検査」はちがうからです。医師の感覚からすれば、「わざわざそんな検査しなくても、治る・治らないに関係ない」。頼まれもしないのにあえて「立証するために必要な検査」をする動機がないのです。決して受身にならず、必要な検査を取りこぼさないようにしましょう

各種の検査とは、WAIS-R検査、WMS-R検査をはじめ、たくさんの種類の検査があります。注意すべきは、たくさんあるテストのなかで、どれか1つだけ検査を受ければ大丈夫、というものでは決してないことです。テストといっても、記憶力を測るテスト、言語力を測るテスト、持続力を測るテストなど、テストで測定できる能力はテストによって様々です。その患者さんはたくさんの脳機能の中で、どの機能が損なわれているのか。それをきっちりと見きわめ、ふさわしい検査を受けなければ、病変を証拠化することができません

不足している検査が何かは個別具体的な事案によって異なります。もし不安を感じておられる方がおられたら、私たちにご相談下さい。

高次脳機能障害と弁護士

被害者の方が高次脳機能障害の傷病を負った場合、弁護士をつけて各種手続を進める価値は十分にあるといえます。控え目に表現するにしても、一度は弁護士の法律相談を聞いてみる価値はあるといえます。

その理由は、3つです。

第一に、前述のように高次脳機能障害は適切な立証活動をしないと、不当に低い等級が認定され、ひどい場合は、そもそも後遺障害として認定されない危険があるためです何が不足している医証か、適切な等級獲得のために次に何をすべきかは、個別の事案によって異なり、その判断は決して容易ではありません。

第二に、高次脳機能障害、とりわけ重度の高次脳機能障害の場合、介護費、将来の介護費など、重度後遺障害類型に特有の損害費目が生じるため、被害者の方がお1人で示談交渉をされると判断を誤る危険があり、専門的な保険会社に誘導されて、不当に低額な和解金で示談してしまう危険性があるからです。また、高次脳機能障害の場合、記憶喪失や、言語能力の低下のため、うまく保険会社や裁判所に事故状況を説明できず、過失割合で不利な判断を下される危険性があります。

第三に、高次脳機能障害の場合、損害賠償額が高額になり、相手方保険会社が必死になって賠償額を低く抑えようとする事案が多く、専門的組織である保険会社に、被害者の方がたったお1人で立ち向かうには無理があるからです。現に、当事務所の経験上、高次脳機能障害事案の場合、相手方保険会社が峻烈に争点を立ち上げ、訴訟に至ってようやく解決を迎えることができた事案が多くみられます。また、交通事故の裁判例を調査していると、高次脳機能障害に関する裁判例が全国で多数出ていることを実感します。高次脳機能障害は、新しい分野であるがゆえに争点が多く、かつ、保険会社も真っ向正面から争ってくる後遺障害類型なので、他の傷病に比べて訴訟率は高いといえます。

これら理由から、被害者の方が高次脳機能障害の傷病を負った場合、弁護士をつける価値は十分にあるといえ、控え目に表現するにしても、いったんは弁護士の法律相談を聞いてみる価値はあります。もしご不安を感じておられる方がおられたら、私たちまでご相談下さい。

当事務所の解決事案  -高次脳機能障害

■事案
  Aさんは、自転車で帰宅中、よそ見をしていた自動車にはねられ、救急車で病院に緊急搬送され、即日入院となり、緊急手術を要する大怪我を負いました。数ヶ月後に退院したAさんの様子がおかしいことにご家族が気付きます。セカンドオピニオンをもとめたところ、ようやく高次脳機能障害であることが判明。高次脳機能障害が遅れて発見されたため、高次脳機能障害に関する医療機関の記録がほとんど残っておらず、そのため、自賠責が認定したのは、高次脳機能障害9級というあまりに実態と乖離した等級。また、Aさんは事故当時の記憶を完全に喪失していました。当事務所が事件をお手伝いすることになり、民事裁判を提訴しました。

■保険会社と意見が対立
  相手方は、高次脳機能障害の発見が遅れたことを理由に、「交通事故から何ヶ月も遅れて高次脳機能障害が生じたのはおかしい。交通事故とは無関係だ!」と主張。また、Aさんが事故当時の記憶を喪失していたことにつけこみ、相手方加害者は、事故状況に嘘をついて、Aさんの過失を主張。裁判所で激しく意見が対立しました。

■解決
  判決で下された結果は、高次脳機能障害は自賠責9級よりも等級が上がり、高次脳機能障害7級が認定され、他の部位の後遺障害とあわせて併合5級が認定されました。また、過失割合はAさんの過失ゼロと判断され、幸いにして勝訴判決を得ることができました。高次脳機能障害は相手方と対立する争点の数が多く、交通事故の発生から約5年たってようやくの解決。高次脳機能障害案件の難しさをあらためて実感した事件です。

高次脳機能障害の後遺障害等級

高次脳機能障害の等級表

1級
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの。

補足的な考え方として、身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回りの動作に全面的介護を要するものをいう。

2級
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの。

補足的な考え方として、著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、一人では外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないものをいう。

3級
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの。

補足的な考え方として、自宅周辺を一人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なものをいう。

5級
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの。

補足的な考え方として、単純繰り返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないものをいう。

7級
神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの。

補足的な考え方として、一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないものをいう。

9級
神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの。

補足的な考え方として、一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるものをいう。

山本・竹川法律事務所

弁護士 山本  明生

弁護士 竹川   聡

お電話お待ちしています。
☎06(4706)2345

大阪市中央区北浜2丁目1番3号北浜清友会館ビルディング。北浜駅から徒歩1分、淀屋橋駅から徒歩7分。大阪弁護士会所属。

当事務所HP http://ytlo.jp/